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無防備に眠るお兄さんは、花を撒き散らして眠る白雪姫みたい。
無駄に色気がぷんぷん漂ってる。
――起きたら、俺呼んで?
そう言われ、静也くんと番号を交換した。
眠るお兄さんの横に椅子を運び、座りながら静也くんの番号を電話帳へ登録した。
カーテンが、風に揺れてたゆたう。
潮の香りと日差しが、白い壁に当たり、部屋中が明るく白くキラキラ輝く。
そしてお兄さんは花のように香る。
キングサイズはありそうな広いベットに、お兄さんは沈んでいた。
「……んん」
寝返りと共に、スルルとシーツが床に落ちた。
携帯をベットの端に放り出し、シーツを拾い上げる。
そして、はだけた胸を隠すようにそれを被せた。
「誰?」
「わっ」
ぎゅっ
突然被せた死角から、お兄さんの腕が伸びてきた。
「ちょっと! 起きた……の?」
ぐいっと引っ張られ、お兄さんの横に沈んでしまう。
慌てて起き上がり、お兄さんを睨もうとして息を飲んだ。
――め、メチャクチャ顔が近い!
思わずときめいたのに、次の言葉で、心臓から急激に冷めてしまった。
甘い吐息のように、耳元で囁く。
「――香織さん、キスしよ?」
酔って頬染めて、誘うように首を傾げて。
――私の名前、『かおり』じゃないんだけ
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