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けれど、先に目を見開いたのは男の方だった。
そしてすぐに目元をふんわり優しく細めた。
きっちり着こなしたタキシードからでも分かる、すらりとした身長。
甘く笑う口元や長い睫毛の瞳は、中性的で優しげな雰囲気を醸し出している。
何だろう……?
このストイックなんだけど無駄に色気がある 感じ。
「綺麗になりましたね。――そら」
「は?」
「聖(ひじり)さーん! その花束、此方ですよ!!」
同じくタキシード姿のスタッフと思われる人が叫ぶ。
かなり急いでいるようで慌てて走ってきている。
「あー……。そら、もしかして、このまま家に戻る予定?」
ややおっとり喋る男に、少しだけ既視感が。
「そうだけど……」
「家に連絡してないですよね? 話したい事があるから、『Fiore』って喫茶店で待ってて下さい」
「は? 突然何? てか誰?」
私の事を知っているような雰囲気のこの男だが、どんどん勝手に話を進めないで欲しい。
腕を組み、下から上まで値踏みするように睨み付けてやる。
私は顔が良い男にはもう騙されないんだからね!
すると、その男はフッと甘く笑って整った唇を動かした。
「お隣のおにいさんですよ」
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