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ない。
無い。
無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い。
一体これは何?
意味が分からない。
柚にも電話が繋がらないし。
さっきのおにいさんに言われた通り、家の向かいにある『Fiore』に向かう。
煉瓦作りのアットホームな喫茶店で、ハーブや花が咲き乱れ、窓枠まで蔓が侵入して来ている。
看板も無いし窓も閉じてるし、地元の人じゃなければ喫茶店だと気づかないかもしれない。
夜はbarになってたなんて知らなかったし。
カランカラン
今時、自動ドアでもなく、ドアについている鐘が鳴る喫茶店。
淡いオレンジ色の照明に、丸いテーブルの中央には可愛らしい薔薇の花が飾られている。
「いらっしゃい」
バーカウンターでは、バーデンダーがグラスを磨いている。
赤いフレームの眼鏡に、後ろにきっちり縛った髪。
目元はやや年齢を感じさせる皺があるが、それが色気を漂わせている。
って分析は今はいいの! 緊急事態なのに!
「ちょっと! 私の! 私の家が無いんだけど!!」
面を指差して、大声で捲し立てた。
そう言うと、そのバーデンダーは目を見開く。
「……そらちゃん?」
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