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カウンターから身を乗り出して驚きながら、また言われた。
眼鏡までずらして。
「速水さん宅の、そらちゃんでしょ? 向かいの」
目をパチパチさせるこのオッサンに、見覚えがあった。
「あれ? 静也くん、老けた?」
色気がある目元……と思ってたけどよく見たら馴染みの人だ。
共働きの親のせいで、私はこの喫茶店でよく親を待ってたり、夕食を食べてたりしたんだから。
「酷いなぁ、そらちゃんは。んで相変わらず辛辣だ」
「静也くん、私の家、なんか駐車場になってんだけど?」
呑気に話す静也くんが居るbarへ近づく。
うわ……。よく見たら顎髭まで生えて老けただけでなく、男らしくなってる。
まぁ静也くんは私がランドセル背負ってた時から、既に180センチはあって学ランが似合わない高校生だったもんね。
「そうそう。速水さん達は半年ぐらい前に土地を売って北の国へ隠居するとか言って引っ越したよ」
「はぁ!?」
「大丈夫。君んちの土地を買ったのは君の隣の『おにいさん』、聖(ひじり)だからさ」
聖……?
「覚えてない? そらちゃんの初恋の相手」
私の初恋……?
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