370人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
私の隣のお兄さんと言えば……、
学ランのボタンをきっちりとめて、花の良い香りがして、
いつも知らない女の人と歩いていた。
毎回別の人。ローテーションするかのように日替り。
女の人が帰った後や居ない日は、
同じく親が共働きで、ほぼ放置されていた私たちは、
よくこの喫茶店で過ごしていた。
意地悪でからかってくる静也くんよりも、
いつも静かにただ隣に居てくれるお兄さんの方が私は確かに好きだった。
「さっき、会った。会ったわよ。お兄さんに」
私を見て、驚いてた。
学生の時は、もっと中性的な、女の子みたいな綺麗な顔だったのに、
大人の男の人みたいに笑ってた。
「あいつはそらちゃんが上京しても女の子食いまくりだったからなぁ。びっくりしたろ?
あんまりモテるから婚約破棄されて、慰謝料もがっぽり貰って、店まであんなにでっかくして」
コトッ
静也くんはピンク色の綺麗なカクテルを作ってくれた。
アルコールは低めの、甘い炭酸。
「婚約破棄? 店?」
お兄さんの家は確か小さな花屋だったような……?
「窓から見てみろよ。『フラワーデザイナー』の湯沢 聖(ゆざわ ひじり)のお城を」
最初のコメントを投稿しよう!