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「直!ここはこの色?」
横田くんと比較的仲が良い森住くんが
絵の具でカピカピになった絵筆片手に問いかけている。
アタシはその会話を気にしながら、
卵の白身みたいな白をひたすら塗りたくってる。
白だから塗らなくても良いんじゃない?って思ったけど…
そう言う訳にはいかないらしい。
一番表面積が大きくて、誰でも出来そうな所を
横田くんは振り分けてくれた。
「 そこは…あー。それでいいな。」
スカイブルーみたいな真っ青な色。
何の色で何の絵になるかは、横田くんの頭の中に有るだけで、
アタシたちは彼の手となり足となり、
普段描く絵の大きさよりも大きな
模造紙の貼られたべニア板に
地味に…地味に色を塗っている。
横田くんは真っ白なワイシャツの袖口に、
少しだけ黄色と青色の絵の具を付けて、
アタシたちと違う細かな作業を繰り返している。
森住くんの塗った青色の中に…
ふわふわと綿菓子みたいな雲が
横田くんの筆でふわふわといくつもいくつも広がって行く。
アタシが塗ってるのは…一際大きな…雲みたいだ。
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