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筆を一度洗いに行ってる森住くんが不在なので 二人きりなのに、 アタシはドキドキしてる割に手がカチカチと震えたりしないし、 膝もガタガタと揺れたりしなかった。 普段よりも近い距離で、 横田くんの手や腕を見つめる。 上手に描く腕は少し筋肉質で、 時々息を呑んでいる時に上下する喉仏は 結構大きめで、 アタシには無い体の一部に、ドキドキした。 あの手…繋いだらどんな感触かな… 上下する喉仏を、動かないように押さえつけたら 苦しいのかな… 真っ白な絵の具を塗ってるアタシは、 アホみたいなことを考えて、 その時に横田くんがどんな表情を浮かべてくれるか 考えるだけでドキドキとした。 腕まくりした真っ白なワイシャツから伸びる手が、 シュッと新しい線を描くたびに… アタシは息を呑みこんでしまうから お腹の中で空気が貯まって、 ゲップが出そうになるし、 それを我慢すればするほど… 今度は情けない音をたてておならしちゃったらどうしよう…って その事が心配で心配で… なるべく息を呑まないために 横田くんの顔を、腕を…見ないようにすることで 一生懸命だった。
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