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「まだ…いたんだ…」
教室の後ろ側の扉の前で、
誰もいないはずの教室に、
人がいたって事に驚いた顔をしている
横田くんの姿があって、
アタシは少女趣味みたいな考えが頭に浮かんだ。
『運命みたいなものが、この偶然に繋がっていたのかも…。』
腐ってる。脳みそも人間も…
そうとしか思えない考えを一瞬で消し去り、
「横田くんも…行かなかったの?カラオケ。」
この3週間のお蔭で、
アタシは普通に横田くんに話しかけると言う高度な技を
身に着ける事が出来ていた。
「 うん。何か、文化祭は…まだ終わってないから
打ち上げって気分にまだなれないから……それに…」
そこで言いよどんだ横田くんに
ん?って顔をして、続きの言葉を無言で催促すると、
「 この絵…明日には無くなってしまうから…
もう少し見ておきたいなぁ…って思ったんだ。」
少し照れくさそうにしながら、空を見上げるようにして
自分の描いた絵を、大事な物でも見るようにして、
焼き付けていた。
アタシはその横顔に、また性懲りも無くドキドキして、
ギュッて抱き着いて、真っ白いワイシャツに顔を埋めて、息吸い込んで、
そして、その後でチューってしたいな…って、
発情期の男子みたいな発想をしていた。
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