第1話

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俺は、クローゼットからシャツを出して、羽織った。 携帯の着信履歴を見ると、2件の新着メールと、1件の不在着信があった。相手なんて、チェックしなくても分かっている。メモリの1番に入ってるその番号を出すと、通話ボタンを押した。 まだまだ、清香は出てこないだろう。 電子音の後、繋がる通話。 「ゴメン、携帯今気づいた。どした?」 聞こえた‘ハイ。’という声のあと、続けた、いつもの会話。もう慣れた普段の声の出し方。 『今、誰かといるの?』 不安そうな声。顔が目に浮かぶ。あの長い睫毛を伏せて、きっと泣きそうになっているのかもしれない。
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