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「一人だよ?真智は、今仕事中?」
遠くに聞こえる水音。でも、あんな小さな音、携帯は拾ってくれないはず。
『うん。でも、もう少しで終わる。』
本当は、真智のスケジュールなんて把握してる。どこでやってるのか、何時に終わるのか。大体のことは、知ってる。
「もうすぐ、終わるんだ?」
知っていて、聞き返す。‘うん。あと1時間くらい。何で?’真智の、明らかに何かを期待した声。少し、声が高くなる。それが、あからさまで可愛くて、真智の望むとおりの言葉を返したくなる。
「ウチ、来いよ。夕飯、一緒に食おう。待ってるからさ。」
水音が、止んでる。
ペタペタと近づく足音。
俺は、ドアに顔を向けて、入ってきた清香に、‘シィ’っと、自分の口に指を当てることで示した。それで、清香は全てを把握してくれる。
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