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あたしがタカヤに逢いたくて、ここに来たことはお見通しだったんだ。
「余計なことを、すみません」
「いえ。お気遣いありがとうございます」
バーテンダーに会釈して、席を立った。
……タカヤ。
昨夜ここで、何を考えていたの?
あたしのことを一瞬でも思い出してくれた?
そんなことを考えながら、バーを出てタクシーを止めた。
行き先を告げて、シートに凭れ掛かって目を閉じる。
今夜は、なんだか疲れてしまった。
早くベッドに横になって眠りたい。
目を閉じたままでいると、このまま眠ってしまいそうだった。
すると、ぼやけたあたしの意識を引き戻すように、電子音が鳴り始めた。
pipipipi,pipipipi
pipipipi,pipipipi
あたしのバッグの中からだ。
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