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   注文を済ませたタカヤと取り止めの無い話をする。 だけど、普段会話らしい会話を交わしていないあたし達は、直ぐに言葉に詰ってしまう。 切子細工が施してあるお猪口に注がれた冷酒を飲み干すと、タカヤが無言でお酌をしてくれる。 「ありがとう」 「どういたしまして」 言葉は続かない。 けれど、それが苦痛じゃないから不思議だった。 「美味そうに食べるね」 「だって、本当に美味しいもの」 「他に、何か欲しいものはある?」 ……欲しいものなんて。 タカヤの他に何があるっていうの。 でも、それは手に入らないから。 「冷酒をもう少しだけ」 そう言えば、「可愛いね」とタカヤは笑った。
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