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   雲の切れ間に薄っすらと見えていた月も今はすっかり姿を消してしまった。 夜更けすぎには、雨が降るのかもしれない。 タカヤは立ち止まると、前を向いたままで静かに口を開く。 「俺は、一度離婚を経験している」 「……そう」 「もう、結婚するつもりは無い」 想像していたよりも驚かなかった。 ただ、何故今になってこんな話をするのか、タカヤの真意を知りたかった。 あたしとの関係を明確にしたいのだろうか。 それとも…… 「どうして、あたしにそんな話をするの?」 「さあ、どうしてだろう」 タカヤは薄く笑うとタクシーを止める。 あたしを先に乗せ、自身もあとに続いた。 行き先は、あのマンション。 あたしは、今夜一緒にいられることに、ホッと安堵の息を吐いた。
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