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新しい仕事と一人暮らしにも慣れた頃
あたしは思いがけない人と再会した。
いろんな会社が入居している雑居ビルのエレベーターホールで「美奈」と声をかけられたのだ。
「……あ」
その声に振り向くと、元カレの徹がスーツ姿で微笑んでいた。
「久しぶり」
「ひ、久しぶり」
徹は嬉しそうに微笑んでいる。
あんなヒドイ別れ方をしたのに、どうしてあたしに笑顔を向けることができるのだろう。
「美奈はここで何を?」
「そこの会社で働いているの」
「へぇ、就職したんだ」
「うん。派遣だけど」
曖昧に微笑んで徹から目を逸らした。
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