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「聞こえないのか?」
再び騎士が問いかける。
聞いた事の無い言葉だが、私にはきちんと何を言っているのかわかる。
「あ・・聞こえます!」
(!?)
騎士が怪訝な表情をしていたので、慌てて聞こえていることを伝えるために話しかけた。
だが、自分が話した言葉は今まで話していた日本語ではなかった。
(な・・なんで!?)
今の今まで普通に日本語を話していたはずなのに、今私が話した言葉は全然聞いた事の無い言葉だった。
英語なら学校で習っていたので、少しはわかる。
そしてドイツ語、イタリア語も従姉妹が海外へ仕事へ行くたびに話すので聞いたことがある。
だけど、今私が話していた言葉は全然聞いた事が無い。
はっきり言って発音出来ているのが不思議なくらいだ。
「あぁ、聞こえていたか。 ところでここで何をしている?」
内心では何故言葉がわかるのか不思議でしょうがないが、騎士の問いかけにとにかくここがどこなのか聞くことに決めた。
「あの! ここってどこですか? 日本ですよね? だって私、さっきまでビジネスホテルの前にいたんだもの!」
勢いこんで話しかける私に騎士はまたも怪訝そうな顔をする。
「日本?日本とはなんだ? とにかくここにいては危険だ。 ミスミドの森を知らないのか?」
「ミスミドの森?」
日本じゃないとの言葉に驚く前にミスミドの森のことを聞く。
「後ろを見てみろ。 あそこにあるのがミスミドの森だ。」
確かに少し後方には森がある。
少し鬱蒼としているが、見た目は普通の森だ。
「あのミスミドの森には魔獣が出る。 最近では魔獣に襲われて死者が出ているくらい危険な森なんだ。 半年程前は普通の森だったのに、何故魔獣が出るのか・・。」
まじゅう?って魔獣ってこと?
「あの、魔獣って・・」
「あ?魔獣を知らんのか? レッドベアーや、ブルータイガーなどとにかく凶暴な獣の事だ。 ただの獣ならいいが、魔力持ちの為討伐に時間がかかっているが。」
魔力?魔獣?
一体なんのこと?
この時点で既に自分がいるのが日本ではなく世界さえも違う事に少しずつ気付き始めていた。
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