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「とにかくここにいてはマズイ。 早くここから離れよう。」
騎士の言葉に頷く。 とりあえずここが日本ではない以上この場にずっと留まるわけにも行かないし。
「わかりました。 あの私、三橋ゆりあ・・。 あ、ゆりあ三橋かな?って言います。」
名前も名乗っていなかった事に今更ながら気付き、自己紹介をすることにした。
「ユリア・ミハーシュ?か? あぁ、すまない。 こちらこそ名乗っていなかったな。 私はカイン・アスバートと言う。 ここグランドホルン王国の騎士だ。 今日はミスミドの森の様子を見に団長の代わりにやってきた。」
カインと名乗ったその人はやはり騎士だったようだ。 馬に乗っていたし、服装も黒いどこかの軍服のような格好をしている。 肩には飾り緒らしきものと、銀色の房飾りがついている。 そして、その腰には細身の剣のような物がある。
ミスミドの森で最近起こった魔獣の被害調査の為やってきた所だったらしい。 だけど、そのミスミドの森の近くに私がいたので注意しようと思ったとカインは言った。 だが、私の格好は見たことのない物だったししかも近くには大きな荷物もある。 恐らくはどこかからこの王国へやってきた者だろうと辺りをつけたようだったが、若い女性が一人でこんな所にいるのも変だと感じたようで、注意するとともに私の事もどうやら観察していたそうだ。
「観察?」
「あぁ。 どうやら荷物以外不審な物は持っていないようだが、王国に入るとなると検査がいる。 だが、"観察"を使うとその者の目的や持っている物が不審な物がどうかがわかるんだ。」
どうやら観察はただ私の事を見るだけの意味ではないようだ。 言葉の響きから別の使い方もあると感じる。
「あの、観察って見るだけの観察じゃないんですね。」
「? "観察"をしらないのか? 魔法の初歩の初歩なのだが。」
「へえ、魔法 ・・・・って、まほおおおおお?」
少しずつ感じていた違和感がここにきてはっきりしてしまった。 魔法。それは私のいた日本では空想上いや物語の中でだけの物のはずだ。 それをこの目の前の人物は当たり前の事のように話している。それはここでは魔法は存在していて、私のように魔法と聞いて驚くような人はいないと言うことなのだ。
(やっぱりここは私のいた所とは違う世界なんだ。)
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