第9章

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まどかを見送った後、編集部に戻ると、ケータイの電源を切っていることを思い出した。 電源を入れると、いきなり着信があってびっくりした。 園子さんだった。 「あ、井上です」 慌てたのを必死に隠しながら声を出した。 「………ああ、そうなんですよ。出先でマナーモードじゃなくて電源切っちゃって、そのまま忘れてました。………ええ、つい今しがた先生からデータ受け取りました。………ありがとうございます。………はい、ハイヤーで帰ったので後30分くらいでそっち着くんじゃないですかね。………はい、ちょっと今日は中を見たいのでそっちに行けないかもしれません。すみません、二人でとりあえずお祝いを。………ええ、すみません」 電話を切って、少し心の中がざわざわしていた。 本当なら、今夜は一緒にお祝いするべきなんだが、園子さんの前でどんな顔をすればいいのか、どう話を合わせればいいのかわからなかった。 そこで、話の中身について口が滑ったら「どうして読めたのか」がまずい。 そんな感じで行けないと思った。 俺は余計なことを考えないように、すぐに校正に取り掛かることにした。
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