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彼女たちとあまり会わなくなって1ヶ月くらい経った頃の土曜日。
俺は書斎にいるというまどかと電話で話していた。
「……ということで、装丁のデザインも完成です」
『そ。お疲れさま』
「ありがとうございます。まどか先生は今日は何してたんです?」
『園子と松島屋のカフェでお茶しながら、次の作品の構想練ってた』
前なら「あんたに関係ないでしょ」とつっこまれていたはずだ。
「おお、それは楽しみですね」
『コジローのとこで出せればいいんだけどね』
「それは大丈夫ですよ。今回の作品で、うちが契約更新しないはずはないです」
『そう?』
「そうですよ」
『そっか』
「はい」
『装丁も一段落なら、明日は休めるんでしょ。ゆっくり休みなさいよ』
「……ありがとうございます」
『じゃあね』
まどかがあっさりしていた。
「あ、あの……」
切るのを躊躇ってしまった。
『なに?』
言ってしまった以上仕方ない。
「明日、どこか行きませんか?」
『え?ほんと?』
電話の向こうのまどかの声が弾んだ。
「ええ、たまには気晴らしでもどうです?」
『行く行く♪』
まどかは思った以上に乗り気だった。
そういうことで、どこに行くか相談したが、まどかは映画が観たいと言った。
そして、渋谷で待ち合わせることになった。
園子さんは実家に帰すらしい。
何て言って帰すのかわからないが、彼女にはその理由がわかるだろうなと思った。
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