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ほどなく上映が始まると、まどかもポップコーンを頬張りながらスクリーンに見入った。
前半でポップコーンが空になると、足元に置いた。
その辺でちょうど怖いシーンがあったので、まどかがきゃーっと叫びながら、俺の左腕にしがみついた。
後は、適当にきゃーって言いながらそのまましがみついていたのだった。
この前はホテルであんなことしたのに、いつもはこんなシチュエーションを用意しないと、俺にくっつけないのかと、普通なら思う。
最初はそれが計算だと思っていたが、ふと、そうじゃないのかも……とも思える様になった。
そう思うと、まどかがなんか可愛いと思えた。
彼女にとって、特に俺を騙す必要なんかない。
仮にあったとしても、そこに悪意は感じなかった。
今は素直に受けとめておこうと、俺の腕にしがみついている頭を見て思っていた。
「コジロー、面白かったねー」
映画館を出ると、まどかは満足そうな顔で言った。
「それは良かったです。じゃあ次は…お腹空いたから、何か食べに行きませんか?」
「うん!」
ポップコーンをほぼ一人で平らげて、実際にお腹が空いてるのかどうかわからないが、まどかはすごく乗り気だった。
「じゃあ、行きますか」
それにつられて、俺もすごく楽しかった。
手打ちパスタを食べて、スイーツを食べて、ゲーセンでまた暴れて、お買い物して、お茶して、お買い物して…
気が付けば、ダイナミックな夕焼けの下だった。
ビルの上の空間にその夕焼けが広がり、その下では街の灯りの中で人々がシルエットになりかけていた。
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