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「なんか、空が狭いけど、こういうのは好きかも」
まどかが言った。
その『こういうの』というのはわかる気がした。
「さて、次はどうしましょうかね?」
「渋谷も飽きたから、どこか他に行こうか?」
「そうですね」
と、お互いニコッとした時だった。
まどかがバッグからケータイを取り出してその表示を見た。
ちょっと見つめた後、
「夜はだめか……」
と、呟いた。
「え?誰です?」
「そ・の・こ。……はい、もしもし、私」
まどかは電話に出ると少し離れていった。
「うん、今、渋谷。………いいよ。一人だから。うん。………じゃあ、モアイ像のところでいい?………うん、わかった。待ってるね」
まどかと園子さんのやり取りはわかった。
「コジロー、今日はありがとう」
まどかは通話を切ると、そう言った。
「いえ、こちらこそ楽しかったです」
「じゃあ、私は園子が来るのを待ってるから」
「はい、俺は家に帰ります」
シルエットに混じりながら、二人で渋谷駅の方に歩いていった。
その歩みは他のシルエット達には少し邪魔だったかもしれない。
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