第9章

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「なんか、空が狭いけど、こういうのは好きかも」 まどかが言った。 その『こういうの』というのはわかる気がした。 「さて、次はどうしましょうかね?」 「渋谷も飽きたから、どこか他に行こうか?」 「そうですね」 と、お互いニコッとした時だった。 まどかがバッグからケータイを取り出してその表示を見た。 ちょっと見つめた後、 「夜はだめか……」 と、呟いた。 「え?誰です?」 「そ・の・こ。……はい、もしもし、私」 まどかは電話に出ると少し離れていった。 「うん、今、渋谷。………いいよ。一人だから。うん。………じゃあ、モアイ像のところでいい?………うん、わかった。待ってるね」 まどかと園子さんのやり取りはわかった。 「コジロー、今日はありがとう」 まどかは通話を切ると、そう言った。 「いえ、こちらこそ楽しかったです」 「じゃあ、私は園子が来るのを待ってるから」 「はい、俺は家に帰ります」 シルエットに混じりながら、二人で渋谷駅の方に歩いていった。 その歩みは他のシルエット達には少し邪魔だったかもしれない。
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