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「まぁまぁ、玄関先で何やってんの?
……ちょっとごめんなさいね。」
呆れた声が響き、余所行きのコートを羽織った母が私達の脇をすり抜けていく。
2人同時にバッと距離を取ると、母はにやにやしながら私達を交互に見た。
「じゃ、邪魔者は退散しますから、どうぞ中でごゆっくり。」
「失礼しました!」
深々と頭を下げた店長。
母はナフタリンの匂いを拡散させながら、馴れ馴れしくその肩を叩く。
「こんな感じですけど、気立ての良い子ですから。」
フフフと口元を押さえて去っていく浮かれた後ろ姿を呆然と見送ってから、私は小さく咳払いした。
「……あの、寒いですから上がって下さい。」
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