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「……貴女に、ここの仕事は向いていません。」 テーブル横に立つ私の目を覗き込んで、彼は私を諭す。 「失礼かとは思いましたが、ランチタイムの間、貴女の働きぶりを見せていただきました。 ……ファミレスのように、慌ただしい場所が苦手なんじゃないですか?」 「……すみません。 お気遣いは結構ですので、失礼があったのなら、遠回しな言い方は止めていただけないでしょうか?」 どうせ怒られるなら、バッサリいって欲しい。 私は腹を決めて、奥歯を噛み締める。 彼は納得したように頷くと、私に身体を寄せて声を潜める。 「――――うちで働きませんか?」 「…………は?」 思わずすっとんきょうな声を上げると、彼は人差し指を唇に当てた。 「引き抜きなど不躾なのは百も承知です。ですが、僕は是非とも貴女にうちで働いて欲しいと思ってます。」 .
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