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そもそも、オーダーなら他のスタッフで事足りるし、私をわざわざ呼びつける必要はないはずだ。 ……となると、やはりクレームの類いとしか思えない。 重い足取りでフロアへ戻ると、私に向かってにこやかに手を振る男性客が目に入った。 先程、私を呼びに来た同僚を見ると、頷いて肩を竦める。 「あのー、お呼びでしょうか?」 恐る恐る声を掛けると、彼は満面の笑みで私を見上げる。 「はい、お忙しいところ、申し訳ありません。」 丁寧で柔らかな口調に少し胸を撫で下ろす。 「非常に言いにくいことなんですが……。」 ――――きた! これは『貴女の為を思って』なんてクッションを挟みながらクレームを言ってくるパターンに違いない。 .
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