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守貴SIDE**
おばさんばっかりの合気道教室。
職務命令じゃなかったら絶対講師なんか引き受けない。
どんなに一生懸命教えても、
おしゃべりばかりだ。
それでも、俺は一介の公務員、
大切な市民の税金で働かせていただいている公僕。
いつでもニコニコこれ基本形。
『やる気がないなら来るなよ。』
心の声ぐらいは正直でいさせてくれ。
そんな、ある日あいつがやってきた。
「自分の身は、自分で守れるようになりたいんです。」
制服で突然やってきて、入り口で座り込んでわんわん泣いていた。
俺はその時思ったのは、今日の練習は終了だということ。
案の定、おばさんたちはその子の慰め大会に夢中だった。
何かあったらしいが、そのことは口に出さなかった。
ただただ首を振り泣くだけだった。
週2回、あいつは必ずやってきた。
学校指定のジャージを着て、武道場に誰よりも先に来て、
ちょこんと隅に正座していた。
それはいい。問題なのは、類まれなる運動音痴だ。
こんな凄い奴はそうそうお目にかかれない。
ただ、その真剣な態度におばさんたちも、
練習に集中するようになり
充実した練習ができるようになった。
小畑 いちご 彼女の名前。
高校3年、
本来受験生なのに合気道に週2回も通っているのを、
親は知っているのだろうか。
俺は、申込書を見ながら大きなお世話なことを考えていた。
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