第一章 男なんて大嫌い

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守貴SIDE** おばさんばっかりの合気道教室。 職務命令じゃなかったら絶対講師なんか引き受けない。 どんなに一生懸命教えても、 おしゃべりばかりだ。 それでも、俺は一介の公務員、 大切な市民の税金で働かせていただいている公僕。 いつでもニコニコこれ基本形。 『やる気がないなら来るなよ。』 心の声ぐらいは正直でいさせてくれ。 そんな、ある日あいつがやってきた。 「自分の身は、自分で守れるようになりたいんです。」 制服で突然やってきて、入り口で座り込んでわんわん泣いていた。 俺はその時思ったのは、今日の練習は終了だということ。 案の定、おばさんたちはその子の慰め大会に夢中だった。 何かあったらしいが、そのことは口に出さなかった。 ただただ首を振り泣くだけだった。 週2回、あいつは必ずやってきた。 学校指定のジャージを着て、武道場に誰よりも先に来て、 ちょこんと隅に正座していた。 それはいい。問題なのは、類まれなる運動音痴だ。 こんな凄い奴はそうそうお目にかかれない。 ただ、その真剣な態度におばさんたちも、 練習に集中するようになり 充実した練習ができるようになった。 小畑 いちご 彼女の名前。 高校3年、 本来受験生なのに合気道に週2回も通っているのを、 親は知っているのだろうか。 俺は、申込書を見ながら大きなお世話なことを考えていた。
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