episode5 『聖槍と妖刀』

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「この世界は大きく言って、二つに分かれている。お前達の住むここ、学園都市がある科学サイド。そしてもうひとつは俺達魔術師が住む世界、魔術サイド。この二つで今の世界は形成されている」 普段、無口な彼の姿はどこにもなく、ただ今は説明の為の言葉を吐き続けるロボットのようなモノだった。 「科学サイドに能力者がいるように、魔術サイドにも魔術師と呼ばれる存在がいる。魔術師とは、漫画等に出てくる魔法を使う魔法使い……とは少し違うが、そう解釈してもらっていい。能力者は才能で全てが決まるが、魔術師は違う。生まれた時から才能の無かった者が、なんとか才能を持つ者に追いつきたいが為に生まれたのが魔術。これが能力者と魔術師の決定的違いだ」 舞斗と解離は「何が何やらさっぱり……」といった表情で次々と話される言葉を聞き入れていた。 「かくいう俺も魔術師の一人。そして魔術師が一つの目的の為に集団となって行動する組織、それを魔術結社というのだが、俺はその数ある魔術結社の一つ『錆びた音色』のメンバーの一人だ。改めて、魔術師レイ=ザックス=トリュシュティーネだ」 「「……、」」 「我々『錆びた音色』の今回の仕事は、『覚醒能力』の護衛……らしいのだが、本当にこんなヤツの護衛なんてしなければならないのか……」 「解離、こいつ何語喋ってんだ」 「ごめん舞斗、僕にも分からない」 ポカンと口を開けながら淡々と喋るレイの言葉を聞いていたのだが、いきなり過ぎる事が色々あり過ぎて脳の整理がついていなかった。 「待て、簡単にまとめるぞ。てめぇらはおとぎ話に出てくるような魔法使いで、その魔法使いの集団が俺を守りに来た、そういう事か?」 レイは首を縦に振る。 「今は魔術師や魔術サイドについてあまり知らなくても大丈夫だ。とにかく、お前は俺等に守られている身だから安心しろ、と今日は言いに来ただけだ」 そうだろ、と舞斗と解離ではない誰かに向かって言葉を放つレイ。
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