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一方、島津のことを見上げる佐藤さんはしゃちほこばる。
「何で……?」
――うっわ、このやり取り懐かしい。
確か俺が一緒に帰ろうと声をかけた時も、同じように返されたことがあった。
理由が必要なのか、とツッコミたくなる。
「俺達、ご近所さんでしょ」
「あ、あぁ、そっか。そうだもんね」
近くの席の生徒達は、そんな二人のやり取りを不思議そうに伺っていたが、俺は誰にも構わずに無邪気に手を振って輪に入る。
「ねー佐藤さん、帰んないの?」
「溝田君。うん、帰る……けど」
二人のやり取りが聞こえていなかったフリをして笑いかけると、島津も一緒に向き直った。
別にあいつのことが気に食わないわけではないが、何でここで桜子ちゃんじゃなく佐藤さんなんだ。
――佐藤さんは俺が狙ってるって知ってるだろ。
俺は目で合図を受け取ってもらおうとパチパチ瞬きをしてみたが、島津は気付いていないようで
「溝田、俺も一緒に帰っていい?」
駄目な理由はない。
ない、けれども……何なんだこのメンバー。
別に会話に困ることはないが、俺が二人の間に入る形で三人並んで歩くのは、違和感を覚えざるを得なかった。
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