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他愛のない話をしているだけなのに、島津君を独り占めしているみたいでどうしようもなく嬉しい。
……にも関わらず、ニヤニヤを顔に出すことさえ出来ずに、私はコタツ布団に唇を押し付けた。
「島津君、きつくない?寝なくて大丈夫?」
「家出る前に薬飲んだから問題ないよ。こうやって佐藤の近くにいれる時間、無駄にしたくないし」
「……気を使わなくてもいいのに」
「本心だよ」
島津君は照れるようなことを恥ずかしげもなく、すんなり言っちゃう人。
私には到底真似出来ない。
「佐藤はこの世界が近いうちに壊れると思う?」
ちょうど流れていたニュース番組を見ながら、島津君は複雑な表情をして尋ねてきた。
「どうなんだろう」
「他人事っぽい言い方だな」
だって世界がどうなろうとも、一般庶民の私達はどうすることも出来ないのだ。
例え運命が陰惨であろうとも、受け入れる他ないと思う。
なのに島津君はというと、俺は受け入れられない、と断固言い張った。
「俺達の未来はこれからなのに、ぶち壊されてたまるかって思うよ」
――ちょっとムキになってる?
「こんな所で終わるわけにはいかない」
ムスッとしてテレビに視線を向ける姿は、いつもの島津君より少し幼く見えた。
「あ、ごめん。こんな話暇か」
「そんなことない」
近くにいれるだけで十分です。
コタツの中で触れた膝にドキドキしながら、私は熱いお茶を一気に流し込んだ。
――ヒリヒリする……口の中、火傷したかも。
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