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-島津佑馬
場の空気を読んだかのように走って帰る佐藤の後姿を見つめながら、俺は腕に巻き付いた桜子の手をいつものように払った。
「そんな怖い顔しないでよ」
「してないよ?」
「佐藤、思いっきりビビってたじゃん」
先程とは一変、上目づかいで微笑む桜子には呆れ笑ってしまう。
それはさすがに無理がある。
「ねぇ、可純ちゃんと二人で何をしていたの?」
「うちで喋ってただけ」
「佑馬君の家!?嘘、私はまだ一度も行ったことないのに……」
――落ち込んだ顔してる。
以前は大して気に止めていなかった桜子の表情の変化にも、ややもすると気付かない方がおかしいのかもしれなかった。
「俺、佐藤のこと好きっぽい」
桜子は良い友達であって、彼女に対して恋愛感情はない。
告白をされたわけじゃないために、これまでは知らんぷりしていたが、一度口を開くと言葉を止めることは出来なかった。
「佐藤のこと、苛めたりしないでね」
「苛めなんて、そんなこと……」
「俺が一方的に想ってるだけだし」
だから、トモミに向けるような鋭い目つき、佐藤には向けてほしくない。
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