世界のことは、少しだけ知ってる

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 うちの学校は、体育館横に温水プールがある。真冬であっても、水泳部は毎日活動していた。  島津君が泳いでいる姿は、夏の体育の授業以来見ていない。凄く格好良かったのを覚えている。  ずば抜けて早くて、でも丁寧な泳ぎ方で、まるで水と友達みたいって……思わず見入ってしまったんだ。 「まだまだ部員募集してるから、いつでも見学来てよ」 「あたしはソフトボールの方で手一杯だから無理」 「そっか、トモミはソフトしてたか。でも、佐藤は何もやってなかったよね」  部員が少ないらしい水泳部。島津君は勧誘モードで私に詰め寄る。 「みんな優しいし、分からないことあったら何でも教えるよ」 「あ……いや、私は」  ごめんね、と苦笑いすると、彼は残念そうに溜め息をついた。水泳、部活に入れる程得意じゃなくて……。
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