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「可純、やったね。今年もあたし達同じクラスじゃん」
隣でクラス表を見上げていたトモミに肩を抱かれ、私はヘラヘラ笑っている。
どうやら高校二年生のクラス替え、『あの』溝田君も一緒らしい。
――でもやっぱり、島津君とは別々になっちゃった。
彼と私はいつもこう、何となく予想は出来ていた。
四月、クラス表の貼られた玄関前は、生徒達で賑わっている。
顔を上げると、満開の桜の花弁が頬を滑り落ち、地面にこぼれると共に、惜しげもなく誰かが踏み潰す。
美しいのは一瞬で、とても儚い光景だった。
騒いでいる上級生の団体の向こうには、水内君と話をする島津君の姿がある。
春一番の島津君は、バッサリ髪の毛を切っていて清々しい。
会わない間に気持ちが収まるはずもなく、私の心臓は熱く鼓動を早めた。
「島津君、別のクラスになっちゃったね」
「あ、ホントだ。佑馬って隣のクラスになるのか。何だかんだでつるんでたから寂しくなるね」
「……そうだね」
同じ教室で一年、親しいわけではなかったが、彼のいる空間は私にとって特別以上の日々だった。
たかがクラス替え一つ、でも学生にとって学校の存在は大きくて、残念に思わずにはいられない。
そんな時、何気なく目が合った島津君が、水内君と一緒にこちらに向かって歩いてくるではないか。
パッと目を逸らしてトモミに向き直ろうとすると、やっぱり声をかけられた。
「元気してた?」
「お、佑馬じゃん。久しぶりー」
「久しぶり。トモミは相変わらず元気そうだな」
佐藤は、と穏やかな眼差しで聞いてくる彼に、私も変わりないことを伝える。
「はい、これ」
トモミと水内君が話をする横で、島津君は私に小さな紙袋を差し出した。
「何?」
「お粥の鍋」
「あっ!そういえば……」
ハッとして中身を確認すると、鍋と一緒にカラフルなキャンディーの詰め合わせが入っている。
「佐藤、お前、黙って置いて帰っただろー。俺、朝気付いて焦ったよ」
「ごめん。寝てて起こしたら悪いなと思って」
「いや、言ってくれなきゃ気付かないって」
慌てる私を見て、島津君は肩を揺らす。
「もう元気だから、家じゃなくても大丈夫。今度はどこか遊びに行こう」
「遊びに……行くの?」
「うん、駄目?」
あっさり、何でもないことのように言われたが、これはどういう……。
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