世界を犠牲に、手に入れたモノ

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二十分間の休憩時間の使い道はそれぞれ。 生徒達はスタンド裏に出来た影の上に座り込むと、お茶を飲んだり雑談に夢中だ。 場内に流れるBGMは雰囲気を醸し出していて、気分が良くなる。 「お疲れ様。男子は次、組体操の練習だよね」 きついでしょ、と言いながら砂の上にお尻を付けた桜子とは、今年も同じクラスで多々絡んでいた。 「でも、体育祭の練習ってキツいけど楽しいから」 「そう?私は日に焼けちゃわないかが心配」 暑いのに長袖のジャージを着用する女子の気持ちは、正直よく分からない。 色白でも色黒でも、大差ないだろ。 「別に焼けてもいいじゃん」 「嫌だよ、肌白い方が可愛いと思わない?」 「俺に聞かれてもねぇ……」 視線の先に映る佐藤も、桜子と同じ暑そうな格好をしている。 そして、下級生に一目置かれている溝田の隣で、砂の上に何かを描いてはクスクス笑っていた。 「可純ちゃんと溝田君、仲良いよね」 「だね」 「二人が付き合っていても、まだ可純ちゃんのことが好き?」 「まだも何もないだろ」 彼らが交際しているのは、学校でも割と有名な話である。 噂が流れるのは風のようだ。 自分の気持ちを自覚し、動こうとした瞬間、俺は予想外の現実を突きつけられてしまった。 でも、叶わなかったから他の人に手を出すとか、ない。 別に"彼女"という特別な存在を求めているわけではないのだ。 「どうするの。まさか佑馬君、二人が別れるまで待つつもり?」 「さぁ、分っかんない」 諦めたわけでも、奪おうとしているわけでもなく、自分自身これからどうしたいのかは把握出来ていない。 このまま便々と日を送るだけなのか。 ――ホント、俺はこれからどうするつもりなんだろ。
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