世界を犠牲に、手に入れたモノ

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-溝田圭吾 「それじゃあ溝田君、帰りましょうか」 『HEART』を通してから少しずつ話をするようになった神保原とは、今年も同じクラス。 そして、幸い性格の悪いリア充のいない恵まれたクラスになったことにより、彼女とは教室でもたまに話をするようになっていた。 俺にとっても、神保原にとってもリアルでのちょっとした進歩だった。 「私は先に校門の外で待ってるわね」 「あぁ、すぐに行く。いつも待ち合わせで悪いな」 「別に気にしてないわ。あなたは不良達に対して警戒心を持っていて、特に人の目を気にする人だものね」 ――そこまで言うかよ。 まぁ、イケてる奴やヤンキーが怖いのは相変わらずで、一緒に帰る時は外で待ち合わせをしている。 「じゃあ、外でね」 基本愛想のない神保原だが、たまに笑顔を見せることがある。 それは、コウタロウの話をしている時だ。 仏頂面の彼女を簡単に笑顔にさせるコウタロウの存在は、すごく大きい。 校門外で無事に合流し、一緒にペダルを漕ぎ出す。 運動をしていないのに、神保原は自転車を運転するのが異様に早い。 「可純ちゃんとは上手くいっているの?」 「それなりに、ね。正直初めての彼女だから分っかんねぇ」 「私もコウタロウ君が初めての恋人よ。でも、彼の方は女の扱いにはそれなりに慣れてるから」 「そうだろうな」 あいつにとってはユメちゃんが初めての彼女だったもんな。
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