世界と理由と、彼らの存在に――

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-溝田圭吾 果たして一体、いつからそう思われていたのだろうか。 「なぁ溝田、お前、神保原ウミ子と付き合ってんだって?」 昼休みの廊下は、意味もなく騒ぐ連中がいて危険。 低レベルな奴なんて眼中になく、ぶつかられることも多々。 昼休みは放課後と同じくらい怖い。 だから、勉強は嫌いでも、教師がいて学問に縛られる時間の方が安全。 その日の昼休みは偶然トイレに行った帰りで、俺は誰とも目を合わせぬよう下を向き、早歩きでキモトの待つ教室を目指していた。 そんな時、勢いよく肩を組んできた男に、俺は恥ずかしいくらいにビクついてしまった。 「何だよぉ溝田君、怖がんなって」 「……や、別に。俺に何か用」 「冷たいねー、元同クラの仲間だったのに。んで?どうなの、君ら最近結構な噂になってるよ?」 俺も昨日二人が一緒に帰ってる所見たんだよねー。 ――こっそり帰ってたつもりだったけど、バレてたか!?てか、噂!? 「二人だけの密会ってやつー?」 明らかに馬鹿にした口調で、そいつは高らかに笑う。 昨年同じクラスで、リーダー格だったリア充。 名前は覚えていない。 しかし、リア充の中でも性格は最悪な方で、俺もキモトも嫌っていた。 根っからのいじめっ子、と言うべきだろうか……。 目はキツネみたいに吊り上がっていて、人相が悪く、背はヒョロリと高く伸びている。 「神保原とはそういう関係じゃないよ」 「じゃあ何で一緒に帰ってたんですかー?お前等みたいな地味な奴が恋愛沙汰なんて、笑えるね。俺、ビックリしたもん」 「だから、違うって」 「はいはい、いいと思いますよ。地味は地味同士くっついてれば」 ――っんだよ、こいつ……。 たまに挟まれる敬語が頭にくる。 それでも俺は、こいつから見下ろされるくらいチビで、喧嘩もしたことないくらい弱くて、あっけなく俯いてしまう。 「てか、フツーに腹立つよね。地味なくせに、外でコソコソ付き合うとか」
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