世界と理由と、彼らの存在に――

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きっといじめっ子のこいつは、自分がモテないからって、俺達がリア充っぽいことをしているのが気に食わないのだ。 「おい、聞いてんのかよ!」 俯いて心の中で反論していると、周りが注目する程の声を上げられてしまった。 しかし、ソロリ上を見上げれば、再び鼻で笑われる。 俺にどうしろというのだ。 別れろと言われようが、俺はもともと神保原と恋愛関係ではないのに。 「去年一年間は大目にみてやってたけど、溝田って見ててイライラするよな」 「……」 「出たーお決まりのだんまり。授業中当てられて分からなかったらだんまり。俺らが声かけてやっても、苦笑いでだんまり。馬鹿かよ」 キモトに比べれば愛想よく振舞っていたつもりだが、逆にそのような態度が癪に障ったか。 ていうか、お前だって頭悪かったじゃん。 人に言えたことかよ! 「存在感薄いし、チビで眼鏡で馬鹿で運動もダメ。加えてテンパ、ぶっさいく。最悪だよなー、褒める所ねぇ」 それにしても。 ――ちょっとばかし、酷くないか……? 今までは最初から相手にされないのが常で、ただひたすらに大人しく過ごしてきた。 リア充達に危害を与えたことなど、絶対にないはず。 だからこのように面と向かって暴言を吐かれたことは、意外と初めて。 でもまぁ、『チビ眼鏡馬鹿、運動音痴。テンパにブサイク』。 事実を突き詰められたまでだから、言い返せはしないが……ヘコむな、これ。 「もー、イジメちゃおっかなー。今日のお前の態度でどうするか決めようと思ってたけど、酷過ぎる。うん、酷過ぎるわ、溝田君」 「……俺、何かした」 「大迷惑だよ、目障りだし」 名前も知らぬ元クラスメイトはムシャクシャした様子で、自分の前髪を掻き上げる。 色気もクソもない。 ――お前だってストパーで髪の毛伸ばしてるんだろ、前髪テロッテロ、そのスタイルイケメンじゃないから。
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