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-溝田圭吾
「……ってぇ!」
朝、下駄箱にて寝ぼけ眼でスリッパに足を入れると、尋常ではない痛みに飛び上がった。
な、な、何なんだよこれ!
キラリと光を放つ画鋲の先端が、俺の血で赤く染まっている。
――あーあ、今日も朝から出たよ。
ガキ臭い苛めはネチネチ続いており、地味に耐える日々が続いていた。
馬鹿らしい話だ。
俺を標的にしているのは、虐めっ子のあいつだけであり、他のリア充からは特に害を受けていない。
本当にストレス発散がしたいだけなのだろう。
「大変そうね」
温度の低い声に隣を見ると、神保原が冷めた面でこちらを見ている。
「まぁな、神保原と付き合ってるって勘違いされてから災難なもんだよ」
「そう」
――でも……お前も同じ、だろ。
「神保原は大丈夫なわけ?お前もあいつから嫌がらせ受けてんだろ」
「あら、知っていたのね」
何ともないことのようにあっさり流されてしまったが、虐めっ子が目を付けたのは、俺一人ではなかったんだ。
女を虐める男なんて、最低だ。
彼女が取り出したスリッパの表面にも、同じように痛々しげな画鋲がいくつも張り付けてある。
「本当に暇な人よね。その労力、他のことに使えばいいのに」
「あいつのこと、怖くないのか」
「怖くないし、相手にもしていないわ。それに暴言吐かれたり軽い暴力くらいは、慣れてるから」
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