世界と理由と、彼らの存在に――

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* 珍しく積極的に話を進める神保原に押され、その日の放課後、俺は早速彼女の自宅へと向かった。 途中の廊下にて、虐めっ子のあいつに足をかけられて無様に転んでしまったことは、忘れることにする。 「愛本やコウタロウに中身が違う人だって説明は?」 「色々と面倒だから、しなくていいわ。溝田君は神保原ウミ子になりきって楽しんできて」 楽しそうだとは言ったものの、責任重大な気もする。 とにかく余計なことは言わず、状況だけ見て楽しんでくるべきか。 「『HEART』の本体って凄く大きくて重いけれど、頑張って学校まで持って来てね。急かしはしないし、いつでもいいから持って来て頂戴」 「神保原がそこまで言うなら、明日にでも持ってくるよ」 「ありがとう、嬉しいわ」 頭のてっぺんから指先まで固い金属部品を装着すると、神保原の声を合図に意識が飛んでゆく。 ものの数秒だ。 次に目を開けた時、俺は『HEART』世界である自分の部屋のベットに寝転んでいた。 しかし、辺りを見渡すと構造は同じでもインテリアが女子っぽい。 『おはようございます、神保原様』 「愛本か?何か変な感じすんなぁ」 『あらまぁ、どうしたんですか。その男っぽい言葉使いは』 お城にあるような鏡台で顔を確認すれば、リアルの神保原のままだった。 胸に手を当てれば、ふにょりと柔らかな感覚。 ――これが女の胸……。 「へぇ、なるほど。こういう感じなのか」 二の腕より柔いじゃんか、とニヤニヤしながら制服に着替える。 神保原だから欲情はしないが、女っぽい艶やかな髪の毛、プリーツスカート。 まるで女装している気分だ。
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