世界と理由と、彼らの存在に――

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「神保原は昨日の放課後、コウタロウとデートだったんだろ」 ――は? 「あれ?そう言ってなかったっけ」 女の姿の俺を遥か高い位置から見下ろす島津は、疑問符を投げかけてくる。 何かこのアングル負けた気がする……。 「……え、えぇそうだったわね。楽しかった……わよ?」 ――へーんな口調、慣れねーな。 「あ、噂をすればあいつだ」 島津が人目を気にせず手を振る先には、神保原の彼氏である――水内コウタロウ。 坊主に近い短髪も、通学鞄をリュックのようにからう所も変わらない。 それでも彼女の痴戯により、超越した"現実"を突きつけられた人間の一人に違いない。 「ウミ子、おはよ」 「おはよう」 きっとマゾヒズムではない極普通の思春期男子のこいつは、責め狂った選択をしてしまった神保原をどんな風に見ているんだろう。 いつも主観的で現状を守ることに必死なのに、今は怖いくらい冷静な自分がいる。 他人の世界へ行くと、人の気持ちが気になって仕方がない。 「……ユメちゃんのこと、どう思ってるの」 「朝からいきなり何だよ。きつい話題振ってくんなってー」 俺が一番触れて欲しくないことなのに。 「別に、気になっただけ」 コウタロウは青空を見上げると、大きな深呼吸をしてアハハと笑う。 困らせたか。 いや違う、あいつはあっけらかんと笑いながら好きだ、と真実を告げたのだ。 「何度も言ってんじゃーん」 「じゃあ、神保原ウミ子のこと……嫌い?」 「好きだよ、そりゃ彼女だし。悪い奴じゃないし、甘える所は可愛いしな」 春一番に舞い上がる桜の花弁は美しいのに、コウタロウは神保原を好きだと言うのに、どうしても真実味を感じられない。 お前は俺を見ていない。 無理に上ばかりを見て、割り切ってるつもりなのか。
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