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バイタリティのある男の空元気は、見ていて気付かないわけがない。
自分を愛してくれ、もう何度も抱いた女のこと、嫌いではないのだろう。
「今日は親の帰りが遅いから、うち来るんだろ」
「……」
「何か用事でも出来た?いつも喜んで来るじゃん」
誰もいない部屋に彼女を呼ぶって、そういうことか。
秘密を共有するかの如くドキドキすることなんてなく、こんなに淡々と誘われて、神保原は喜んで肌を重ねているのか。
――何だよ、この状況。
笑っているのに、まるで今のコウタロウは、マリオネットのよう。
俺の世界では女々しい顔なんて、一度もしたことないじゃないか。
「……痛いな」
心が痛い。
神保原が真剣にコウタロウに対して恋愛感情を抱いているのを知っているから、きつい。
いっそ痴女にでもなって、男を食い散らかした方が楽にも思えた。
「来る?来ないなら、俺もトモミに買い物付き合えって誘われてんだけど」
そんな顔して言うなよ。
気持ちは分かるけど、神保原だって……。
いつかは消えてなくなる世界にいるお前と、ずっと一緒にいたいんだよ。
俺だって、佐藤さんの手を離したくない。
最初は彼女探しの遊びのつもりだったのに、今ではかけがえのない存在となってしまった彼女。
こんなインモラルな行動、果たしていつまで許されるのだろう。
俺は佐藤さんにコウタロウのような態度を取られたら、ショックでどうにかなってしまうかもしれない。
ねぇ、俺のこと……好き、だよね。
だって、前より仲良くなったし、笑ってくれるじゃん。
佐藤さんこと大事にしてるし、優しくもしてる。
それに島津佑馬は、もうすぐ遠くへ行っちゃうよ。
だから――俺を、神保原ウミ子を、ちゃんと見て。
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