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振り返るよりも前に、あいつがいることは分かっていた。
「みーぞた君に、神保原さん、今日も朝からお熱いですねぇ」
今日はまだスリッパに画鋲を並べていないのか、虐めっ子も今到着したばかりらしい。
クラスメイトは俺達を横目に通り過ぎ、関わろうとする者は誰一人いない。
「普通に話をしているだけよ」
言葉を選ぶ俺に対し、神保原はいつも通りの返しをする。
「それ、なぁに?明らかに学校には持って来ちゃ駄目なものだよね」
「あなたには関係ない」
本来男が女を守るべきだろうに、神保原は俺の前に立つと背の高い虐めっ子を強気に見上げる。
しかしだんまりの自分も、反対に反抗的な彼女の態度も、どちらもNGなのだ。
とにかく俺達を虐めたくって仕方のないあいつは、神保原に向かって暴言を吐く。
「ブスは黙ってろよ!ちょっと頭いいってくらいで、お高くとまってんじゃねぇよ!」
「私、そんなつもりはないわ」
「だからお前は、中学の時だって苛められてたんだろうが!」
どこからか得た情報なのか、彼らが同じ中学だったのかは分からないが、虐めっ子は神保原を睨みつけると彼女を力強く突き飛ばす。
その瞬間、重い鞄を抱えていた神保原はバランスを崩して、並べてある自転車の中に倒れ込んでしまった。
「神保原!」
ドミノ倒しで音を立てる自転車を止めに行く余裕はなく、俺はすぐに彼女の元へと走った。
パイプやタイヤに激突した体に力はない。
それでも神保原は俺の手を払いのけると、早くと自転車を指を差す。
「溝田君、あなた『HEART』……!」
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