世界と理由と、彼らの存在に――

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一瞬の出来事だった。 俺の自転車はあいつに蹴飛ばされると、見る見るうちに地面に叩きつけられる。 そして、止めにかかる前に緩んだロープを解いたあいつは、『HEART』を。 「おいっ……!」 俺の"世界"を―― 「やめてくれっ……!」 俺の、生きる場所を―― 「やめっやめろっ……!」 大きな腕で頭上まで持ち上げると、スピードに乗せてコンクリートの地面に叩きつけてしまった。 ――ガシャン。 電源が入っていなくとも、異常をきたしているのは、間違いなかった。 中の部品が砕け散る音が、俺の脳内で、何度も、何度も、リピートされる。 しかし、神保原の驚きの表情も、虐めっ子の荒い息遣いも、すぐに何も見えなくなってしまったし、聞こえなくなってしまった。 ――佐藤さん。
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