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転校だって意識するようなことされると、切なくなる。
昼休み、二人にお礼を言う為に隣のクラスを訪れると、トモミ一人の姿しか見当たらない。
「ケーキありがと。お前の絵のレベルには改めて驚かされた」
「あは、どういたしまして。佑馬のためだから、ひと肌脱ぎましたよ」
「写真いっぱい撮ったよ」
現在佐藤は溝田と外出中のようで、残されたトモミは昼寝をしていたらしい。
俺のタイミングが悪いのか、この教室で彼女に会うことは殆どない。
「可純は悪くないのよ、断れてないだけ。溝田君の方があの子のこと好き過ぎて、四六時中二人きりでいたいみたいなの」
「それで昼休みになると連れ出す、と……」
「可純は普通にしてるけど、結構束縛激しそうよぉ?あたしは無理」
束縛、激しいんだ。
まぁ、見てれば何となく分かるけど。
でも、自分だったらそんなことしないのに、なんて淡い想像を膨らませる程ガキではなく、どうすることもできない現実は、これでも冷静に受け止めているつもりである。
「それに、これはあたしが勝手に思ってることだけど、可純はそんなに溝田君のこと好きじゃない気がするんだよね」
「トモミの思い過ごしだろ」
「だって一度もノロケられたことないんだよ!?毎日見てたら分かるよ。可純は溝田君のこと、好きじゃない」
人様の関係にズケズケと立ち入って、勝手なことを言って、引っ掻き回したいのか。
いい迷惑だな。
呆れながら首を振る。
「あたしは、可純はあんたのこと好きなんだと思ってた」
「……は、俺?ありえないから」
「あの子、佑馬と話した後、いっつも笑ってた。なのに、春休み明けたらコロッと溝田君と付き合っててさ。信じられなかったよ」
仮に、以前特別な気持ちを抱いてくれていたにしても、今更の話だ。
そんな虚しくなる話、振ってこないでほしい。
「妄想はそれくらいにして、期末テストも近いんだから勉強しろよ」
「うっさいわね」
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