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夕闇に包まれた園内には人っ子一人おらず、自分と彼女だけの空間。
「島津君」
「ん?」
「お誕生日、おめでとう」
「おうっ、ありがと」
改まった口調に佐藤の方を見ると、彼女はちゃんとこちらを見返している。
――あれ、逸らされない。
「学校では言えなかったから。だから、ちゃんと会えてよかった」
何その口調。
避けられているのに、まるでここで俺を待っていたって言い方。
「……私、島津君のこと、嫌ってるわけじゃないよ」
――ここ、喜ぶ所?
「でも、ごめん」
「……あ、もしかして改まった話しようとしてる?」
そういうことか。
佐藤は告白の返事をするために、溝田のいない時間を狙って俺を待ち伏せしていたのだろう。
「困らせてごめんな。あれ、もう気にしなくていいから」
最初から結果を求めていたわけではないのだし。
「俺、空気読めてなかったよな。もうすぐ転校するからいいやって、心のどこかで思ってたのかも。自分勝手だったね」
「……ううん」
「おいおい、そんな泣きそうな顔すんなって」
こんな表情されるのならば、言わなきゃよかったのだろうか。
もー、よく分かんね。
結局俺は、無駄に彼女を振り回しただけなんだな。
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