置き去りの世界を、ひたすらに抱き締めた

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そしてもう一つ、ドカドカと足音が聞こえてきたかと思った途端、 「お、俺の親友に何してんだっ!」 俺よりも何倍もデカイ拳が、虐めっ子の頭に落っこちて、ゴツンッ、と痛々しい音がした。 「キモトッ!」 「……圭吾、何やらかしてんだよ」 自転車の上に横倒れになったままの俺を引き剥がしたキモトは、息を荒げながらも周りの目を気にしている。 「俺等めっちゃ注目浴びてっぞ」 「そんなのもう知らねーよ」 緊張気味のキモトの額から一筋の汗が流れ落ちる。 それでもいつも見てばかりだったこいつが、俺と神保原の元へ駆けつけてくれたのだった。 「キモト、『HEART』が……」 俺はボコボコの顔のまま、無残に転がる『HEART』にしがみつく。 「どうしよう」 「……圭吾、もう今日は学校サボっちまえよ」 「は?」 「のうのうと授業受けてる場合じゃないだろ」 そんな不良みたいなこと……と思う俺に、神保原も表情を変えずに頷いた。 「さぁ行きましょう、溝田君。父なら何とかできるかもしれない」 「神保原」 「後のことはどうにでもなるわよ、とにかく今は急ぎましょう」 こちらを睨みつけたままの虐めっ子はキモトに任せると、俺は神保原と共に学校を飛び出す。 「……キモト、ありがとな」 「おう、心配するな」 佐藤さんは無事なのか。 あちらで異常はないのか。 俺は鼻血を手の甲で拭うと、一散にペダルを漕いで神保原の家を目指した。
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