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俺は二人を両手で抱えると、屋根のある駐車場へと向かう。
しかしその間にも衝撃は俺達を見逃してくれることなく、右手側の島津はビクンと体を震わせるだけで、それ以外の反応を見せない。
いっつも笑ってばっかりの島津の体は、もうとても冷たかった。
「おいっ!」
安全な場へと非難するものの、助けに来るのが遅かったのか。
それでも目を逸らしたくなる光景の中で、俺は幾度となく二人を揺り起した。
「なぁっ……しっかりしろよ!」
お願いだから、目を開けてくれ。
「なぁっ!」
どうして外にいたんだ。
どうして、よりにもよってこの日、この時に――。
「溝……田、君……」
「佐藤さん!」
耳元に触れた弱弱しい声に顔を向けると、薄ら目を開けた佐藤さんは表情を歪めていた。
「どう……して」
「違うっ俺じゃない!」
俺はこの世界を崩壊しようとしていたんじゃない。
彼女を脅してしまったのは、ちょっとした出来心からだ。
俺はこんな残忍なこと……
「わた……しがっ溝、田君……」
何かを必死に口にする佐藤さんを上から抱き締め、耳を近付ける。
すると、ほぼ空気と化した音の言葉が、
「好き……に、なれなかっ……」
たから?
「……佐藤さん」
「ごめっ……な、さい」
「違うっ違うよ!」
壊れてしまうくらい強く抱き締めても、彼女はぼんやり上を見上げたまま動かない。
「……ごめ、ん……ね」
「佐藤さん!」
泣き喚きながら必死にしがみ付く俺に、彼女は謝ることしかしない。
嫌だ。
待て。
まだ、死ぬな。
「絶対……絶対元に戻してみせるから。それまで待っててっ……!」
――その時、世界を包み込む程の大きな光が空を覆った。
そして、ナイフのようなインパルスは全人類の今、そして未来を一瞬にして。
「お願い、待ってて……!」
大事な彼女を置き去りにし、俺は光と共に喪心してしまった。
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