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半ば強制終了のように現実へ戻ってきた俺の体には、傷一つ見られない。
ここはとても安全で、平和な世界。
「俺っ……俺は……」
ゲーム本体に土下座をしたまま、畳に頭を擦り付ける。
「とんでもないことっ……してしまった」
涙はひっきりなしに流れ落ち、嗚咽は止まらない。
「どうしよっ……俺、俺はっ……」
本来、最も早く命を絶つべき責任があるのは自分なのに、一人生きる場へと戻ってきてしまった。
助けるつもりで待ってるように言ったのに、そんなの咄嗟に出ただけの言葉だったんだ。
「俺は佐藤さんを……殺しちまった……っ!」
彼女だけではない。
島津を含めても、きっと数え切れない数の人間の命を奪ってしまったのだ。
言いたくなかった現実を呟くと、何かがプツンと切れて、俺は叫び声に近い声を上げながら畳に拳をぶつける。
「俺、人っ……殺したっ……」
「溝田君、自分を責めないで」
「ちがっ……俺はっ人を……」
――殺してしまった。
世界は本当に脆くて、儚かった。
「溝田君、『HEART』を貸してくれないか」
「……おじさん」
「元通りにする保証なんてほとんどないけれど、こちらも全力で手を尽くしてみるよ。だから、辛いかもしれないけれど、中での状況を教えてくれないか」
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