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事情を説明すると、神保原の父親は『HEART』を抱えて隣の部屋へと消えた。
追おうとした俺を引き留めた神保原は、目を真っ赤にしている。
「私のせいね。私が溝田君に『HEART』を学校に持ってくるように言ったから」
「……神保原のせいじゃねぇよ。虐めっ子のあいつ……いや、俺のせいだ」
危険な場所に持ち込んでしまった、判断ミス。
そして大事なものを守り切れなかった、力不足。
「佐藤さん、ひたすら謝ってた……」
「どうして彼女が」
「俺のこと好きになれなかったから、こんなことになってしまったんだって。何度も、何度も……謝ってた……」
涙に鼻血に鼻水に、顔面は相当悲惨な状況だろう。
しかし神保原は笑わずに、じっとこちらを見ている。
「……きっと、また会えるわよ」
「……」
「お父さん、開発者だもの。大丈夫」
涙を溜めた瞳で呟かれるそれらは、きっと偽りの言葉だ。
それでも彼女なりに気を使って、俺を励まそうとしているのが伝わる。
「バチが当たったのかもしれないな」
「え?」
「俺、『HEART』に依存してたから……佐藤さんの気持ちも、島津の気持ちも、考えれてなかった」
人として最低だったんだ。
終焉のボタンを押してしまった時点で、このような別れ方になってしまうのに反論はできない。
『HEART』を利用して、現実に友達ができ、生活へのやる気も増した。
でも、所詮は"ゲーム"なのに、俺はいつの間にか『HEART』なしでは生きていけないくらい、あの世界を必要としていた。
「……現実逃避、し過ぎてた」
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