置き去りの世界を、ひたすらに抱き締めた

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-神保原ヨシノリ 僕と彼女がお付き合いをし、そして結婚に至るまでは本当に長い道のりだった。 高校一年生で初めて同じクラスになった僕達。 今でも運命の出会いだと信じている。 しかし君は、化学や数学が得意で、友達が少ない僕のことを、入学当初変な目で見ていたね。 猿川(さるかわ)トモミ。 君はとにかくパワフルな子で、人気者の島津佑馬や、はちゃめちゃに明るい水内コウタロウと仲が良かった。 でも、親友である佐藤可純の性格は、どちらかと言えば僕よりで、彼女達は意外な組み合わせだと感じたよ。 高校一年生になってすぐ、あっけなくクラスで浮いてしまった僕は、一部のグループに嫌がらせを受ける寸前の状況だったんだ。 目立ちたいのに目立てない、性格の悪い、たちの悪い集団だ。 そこから救い出してくれたのが、島津や水内――そして、猿川トモミだった。 暴力で方を付けるのではなく、強気で正論を述べる彼らに勝つ者はいない。 彼らは戦隊ヒーローのように、格好良かった。 「神保原君、あんた、ちゃんと友達作りなよ」 ソフトボール部に所属する猿川トモミの肌は健康的な小麦色で、陽に当たると艶やかな美しさを放った。 唇から覗く、黒い肌には対照的な白い歯。 目つきはきつめで、キツネのようなのに、どこか人懐っこくて。 時には周りを寄せ付けない言動の中にさえ、いつも人に対するあたたかさを感じる。 彼女を親友に選んだ佐藤可純は、本当にセンスの良い人だと感心したよ。 僕は助けてもらったあの日から、猿川トモミから目が離せなかった。 島津佑馬や、水内コウタロウが大好きだった。 僕は彼らのおかげで、自分と似たような生徒と仲良くなり、楽しい学校生活を送れたんだ。
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