置き去りの世界を、ひたすらに抱き締めた

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特に島津佑馬に関しては本当に優しい人で、僕にとって神様のような存在だった。 彼は、ガリ勉で面白みのない僕と、頭が悪くてゲームが大好きな親友が近付いても、いつも笑顔で受け入れてくれる。 水内と同じように友達だと思ってくれているのが、本当に嬉しかった。 僕は勉強を教え、親友はゲームの交換をしたこともあったかな。 「……猿川さんって、付き合ってる人、いるの」 二年生になる間近、僕は思い切って島津に尋ねたことがあった。 すると、気持ちを察した彼は耳元でいない、と囁くと親指を立ててニッコリ。 「トモミ、良い奴だもんなー」 「だ、だよね」 「神保原、頑張れよ。俺応援するから、何でも言って」 あぁ、何て心優しいヒーローなんだ……。 やがて学年が上がると、親友や猿川トモミとは同じクラスになれたものの、島津と水内とは別のクラスになってしまった。 喜びたいのに喜べず、心底落ち込んだ記憶がある。 しかし、彼らは頻繁にうちのクラスを尋ねてきた。 それは、島津が佐藤可純に恋愛感情を抱いていたからでもある。 やがて付き合い始めた二人は、間違いなく学校一のベストカップルだった。 人気者の島津の恋人となった佐藤可純は、彼に想いを寄せていたワタリ桜子の小言に頭を悩ませていたようだが……。 「桜子ちゃん、いい加減にしなさいよ。可純困ってんじゃない」 そこは問題なかった。 彼女には親友、猿川トモミがいるからである。 「煩いな。トモミちゃんには関係ないでしょ」 「あたしは可純の代弁してんの。ホンットいつまでもグジグジ女々しいな」 間に入る佐藤可純は困り果て、結局彼女を癒すのは島津佑馬の存在で。 関わりこそ持たなかったが、僕は彼らを見ているのが楽しかった。
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