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「……実在する人物達だったんですね」
僕の話を最後まで聞いた溝田君は、それはそれは呆気にとられた表情をしている。
「僕は君が『HEART』をネット抽選で当てたと聞いた時、運が良いと言ったよね。でも、実はそんなことちっとも思ってないんだ。寧ろ、可哀想な人だと思っていたんだよ」
「……すいません、正直何て言っていいのか分からないです」
彼は愛する佐藤可純が、島津佑馬と長い付き合いの末、結婚に至ったことにショックを受けているのか。
はたまた、僕のこれまでの人生を聞いて何かを感じたのか。
「溝田君が僕の作ったゲームで苦しんでいるのならば、僕は君を助ける義務がある」
「……」
「だからね、『HEART』内でもう一度会いたい人、会うべき人に対面してから、現実を生きてほしいと思ってるんだ」
ウミ子は溝田君が『HEART』を失ってから、現実を見ようとしている。
僕は二人を遠い所から見守ることしかできないけれど、手探りでも前へ突き進もうとしている二人の背中をどうにか押してあげたい。
『HEART』は世の中に出すべきものではなかった。
もう遅いかもしれない。
でも、やってみなければ分からない。
「アダチ、話があるんだが」
「ん、どうした?」
「『HEART』は生産中止、及び倍の以上の値段での回収を開始しようと思う」
こんなに無茶苦茶な話にヘラヘラOKを出すアダチは、やっぱり僕の親友だった。
僕は何度このアダチの間抜けさや呑気さに救われてきたことだろう。
「他のゲームで勝負しようと思うから、僕を信じてくれ」
「神保原にやれないことはないだろ。あの猿川さんを嫁さんに出来たんだから、楽勝だ」
僕は僕の生きる道を、これからもウミ子と共に探し続けるんだ。
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