置き去りの世界を、ひたすらに抱き締めた

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* 何とかキモトと共に滑り込んだ三流大学。 その入学式で、俺は一番顔を合わせたくない相手の隣の席となってしまった。 「あ」 両者顔を見合わせた瞬間、同じ言葉を発し、俺は瞬時に目を逸らす。 ――何でこいつがここに!?しかも同じ学部……学科だと!? 俺に嫌がらせをしていた虐めっ子。 グレーのスーツをパリッと着こなしていて、自分より年上に感じるのが悔しい。 俺は高校在学中、あの騒動以来、虐めっ子と関わることは一切なかった。 顔を合わせればお互い無視を決め込んで、言葉を交わすなどもっての外。 なのにこいつは、生まれ変わったかのようにあっけなく声をかけてきたのだ。 「あぁ、そういえば溝田もこの大学だったな」 「……」 「そうそう俺、卒業の日にお前に話したいことがあったんだよね」 でもお前、愛しの神保原と二人でさっさと帰っただろ、なんて。 何友達口調で喋ってやがんだこいつ。 ふざけてんのか。 「てか、溝田、随分イメチェンしたな」 「別に」 生まれて初めての美容室、入るのには相当勇気がいったが、ここは頑張った。 髪の毛は染めて、イマドキ風にしてもらったし、オシャレの勉強だって始めようと雑誌を買ってみたり。 この際だから、大学デビューもありかも?なんて勢いだったのに、どうしてこいつがここに……。 最悪だ。 何も入学初日に顔を合わせなくてもいいじゃないか。 ついてない。 ――あぁもう、ホントふざけてる。 しかし、パイプ椅子に腰を掛けた虐めっ子は、俺を見た後に大きな溜め息をついた。 「実は俺、お前を虐めてた時、クラスの連中に虐められてた」 「……は」 「お前や神保原のことを見下してたのはホントだけど、俺もダチに同じことされてたんだよね。腹いせににお前等に酷いことしてたけど」
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