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何とかキモトと共に滑り込んだ三流大学。
その入学式で、俺は一番顔を合わせたくない相手の隣の席となってしまった。
「あ」
両者顔を見合わせた瞬間、同じ言葉を発し、俺は瞬時に目を逸らす。
――何でこいつがここに!?しかも同じ学部……学科だと!?
俺に嫌がらせをしていた虐めっ子。
グレーのスーツをパリッと着こなしていて、自分より年上に感じるのが悔しい。
俺は高校在学中、あの騒動以来、虐めっ子と関わることは一切なかった。
顔を合わせればお互い無視を決め込んで、言葉を交わすなどもっての外。
なのにこいつは、生まれ変わったかのようにあっけなく声をかけてきたのだ。
「あぁ、そういえば溝田もこの大学だったな」
「……」
「そうそう俺、卒業の日にお前に話したいことがあったんだよね」
でもお前、愛しの神保原と二人でさっさと帰っただろ、なんて。
何友達口調で喋ってやがんだこいつ。
ふざけてんのか。
「てか、溝田、随分イメチェンしたな」
「別に」
生まれて初めての美容室、入るのには相当勇気がいったが、ここは頑張った。
髪の毛は染めて、イマドキ風にしてもらったし、オシャレの勉強だって始めようと雑誌を買ってみたり。
この際だから、大学デビューもありかも?なんて勢いだったのに、どうしてこいつがここに……。
最悪だ。
何も入学初日に顔を合わせなくてもいいじゃないか。
ついてない。
――あぁもう、ホントふざけてる。
しかし、パイプ椅子に腰を掛けた虐めっ子は、俺を見た後に大きな溜め息をついた。
「実は俺、お前を虐めてた時、クラスの連中に虐められてた」
「……は」
「お前や神保原のことを見下してたのはホントだけど、俺もダチに同じことされてたんだよね。腹いせににお前等に酷いことしてたけど」
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